F20Cを壊さないためには(前編)


さて、F20Cが壊れる原因がわかったところで、今度は壊さないためには、どうしたらいいかを考えてみましょう。

研究結果より得られた、ピストンの軽量化、ピストンピンの変更、オイルラインの変更、等はお金が掛かる、と言うか、現実的に不可能なので、エンジンを開けずに、簡単にできる物を考えてみたいと思います。

まず始めに、金属は熱と、熱変化に弱い事を覚えておく必要があります。
よって、いかにエンジンを冷却してやるかが、非常に重要となります。

それではまず始めに、冷却の話から始めましょう。
エンジンを冷却する主なものは、冷却水とエンジンオイルです。
実質、エンジンの冷却の殆どは、ラジエターの冷却水で行われます。
よって、冷却水(LLC)の温度をいかに下げてやるかが重要となります。また、LLCも効率の良いものを選ぶ事が重要です。

その前に、水温を見るために水温計は必ず付ける事をお勧めします。物は、ECUから取るTECHTOM等の安いものがお勧めです。 理由は、サーモスタットを通る前の本当のエンジンの出口の温度がわかるからです。
LLCは、エンジン冷却水ですが、正確に言うと熱交換を行うものです。
つまり、エンジンで熱を吸って、ラジエターで熱を吐く訳ですね。この熱変換効率が良いLLCが、エンジンを良く冷やすLLCと理解すれば良いでしょう。

よくLLCを交換したら水温が下がった、何て話を聞きますが、熱変換効率が悪いLLCでもそうなる可能性が有ります。
経験上、良いLLCとは、水温計を見ていて、温度変化が敏感に起きる物だと思います。
簡単に言うと、水温が上がりやすく、下がりやすいものといった感じですね。
例えば、走行風が当たりだすと短時間で水温が下がり、止まってアイドリングすると短時間で上がるものですかね。
止まってもすぐに水温が上がらないものは、エンジンの熱を吸収していない証拠です。

水温は、個人的には、走行中は84度を超えないようにした方がいいと思います。水温が上がると言う事は、エンジンブロックの温度が高いということなので、当然油温も高くなります。
84度の水温では、大体油温は120度辺りになります(油温計や、取る位置により変化するが)。
あ、純正のサーモスタットでは84度以下をキープするのは不可能です。90度までサーモスタットが全開にならないので。
当然、油温も高くなりやすいでしょう。

サーモスイッチも、純正よりも低回転でファンが回るものは、アイドリング時などに温度変化を抑えてくれるので、有効だと考えます。
スポーツ走行する人は、2点セットで入れている人が多いですね。
低温でファンが回るサーモスイッチが付いていない人は、水温が上がった所で、アイドリング中にエアコンを付けてファンを回すと言う裏技もあります。 実際にファンが回れば水温が下がります。

そして次に、ラジエター交換ですね。
夏場にスポーツ走行で、80℃前後で走るには、純正ラジエターでは厳しいと思います。
個人的には2層程度のラジエターがお勧めです。3層だと、ウォーターポンプに負担が掛かる上、水量が増えてラジエターが重くなるので、オーバーハング部が重くなって運動性能を下げます。
更に、2層で足りないほどの走り方だと、エンジン以外の部分、例えばミッションオイルやデフオイル、ハブベアリングやドライブシャフトのグリースなども相当高温になっているはずなので、他の部分が壊れる可能性が有ると思います。
まあ、ミッションオイルクーラーやデフオイルクーラーまで付けないのでしたら、3層にして水温だけを下げるのではなく、車全体をクーリングをしたほうが良いと思っています。

どうしても2層のまま、もっと水温を下げたいのならば、エアコンのコンデンサーを外して直接ラジエターに風が当たるようにし、ボンネットにエアダクトが付いているものに変えることで、だいぶ水温が下がるようです。
ただ、エアコンは使えないし、エンジンルームに水やゴミが入るという覚悟が必要ですが。

そしてどうしてもラジエターを交換する資金がない人は、とりあえずヒーターを外気導入にして、一番熱い状態で全開にすれば、季節にもよりますが、5℃程度は下げる事ができます。
時々軽量化のためにヒーターを外して、逆に大容量の重たいラジエターを付けている人がいますが、ヒーターはラジエターと違いホイールベース内の重心近くに付いているので、上手く使えば良いと思っています。
私は、ヒーターを第2のラジエターと呼んでいます(笑)。
もちろん室内は熱くなりますが、スポーツならば我慢です(笑)。


さて、 冷却水の話はこれ位にして、次に空気系の冷却を考えて見ます。
まず、エンジンの温度を下げるもう一つの方法として、インマニの温度を下げる事を考えました。
インマニの温度は外から下げるのは難しいので、中から下げる事を考えると、吸気温度を下げればいい事になりますね。
特にS2000の吸気口はラジエターの後ろの熱い所についているので。
よって、無限製などの外気を直接吸える物にすれば、吸気温が下がりインマニの温度も下がるはずです。
吸気温計を付けている人は判ると思いますが、エンジンは回せば回すほど、アクセルは全開にする程、吸気温は下がるので、これは非常に効果がありそうです。
私は吸気温は、大体40℃以下にしておきたいと思っています。
また、ブローバイガスを大気開放するのも、吸気温度を下げる効果的な方法です。
詳しくは、オイルキャッチタンクの項を参照して下さい。


そして次にエキマニです。
エキマニが発する熱は非常に高く、更にエキマニの熱は空気を通して伝わるよりも、放射(いわゆる黒体放射)によって伝わるので、非常にタチが悪いです。
放射の熱とは、簡単に言うと赤外線コタツみたいなものです。これは電磁波なので、空気が無くても伝わる熱です。
この熱は、エンジンやオイルパン、オイルフィルターなどに伝わります。
これらは全て、油温を上げる要素ですねぇ。

放射熱を抑えるには、金属板など使い、物理的な遮へいを行う必要があります。実際に純正のエキマニには遮熱板が付いていますね。無限のエキマニにも標準で付属しています。
まあ、メーカーや無限がやる事なので、「必要だから付いている」と解釈した方が良いでしょう。
しかしながら社外品には、基本的に遮熱板は付いていません。 よって、社外のエキマニにはサーモバンテージを巻くのが必須だと考えています。
良く、見た目重視でムキ出しのエキマニの人がいますが、エンジンのためには、性能面でも冷却面でも、デメリットしかないと思います。
純正品でも更に遮熱をするために、エキマニにサーモバンテージを巻くのも良いと思います(もちろんその上から遮熱板も付ける)。

エキマニは特に、オイルフィルターを熱くしているのがとても良くわかります。
オイルフィルターは、外に付いているので風に当たり冷却に一役かっているように思いますが、実際にはエキマニから貰う熱の方がはるかに大きいと思います。 放射熱は、走行中に風が当たっても途切れず熱を与え続けるので。
よって、オイルフィルターを遮熱するのも面白いと思いますね。
(エキマニとオイルフィルターの間に遮熱板を入れたくなりますね(笑)。)

エキマニは、 サーモバンテージもいい物を巻けば、かなり遮熱できるようなので、お勧めです。

さて、冷却の話はこれ位にして、次にオイルの話に移りましょう。
オイルは、エンジンを壊さないために最も重要なものだと言って良いと思います。
オイルで重要な事は、「適正な成分、温度、粘度のものをキッチリ油圧を掛けて、とにかくしっかりと潤滑してやる事」です。
オイル減りやオイル偏りによる、オイルポンプの空打ちや、油膜切れは、速エンジンブローに繋がるので、絶対に避けなければなりません。

それでは、絶対に空打ちしないような方法を考えてみます。
まず始めに、とにかく走行前にはオイルゲージを抜いて、オイルの量を確認する事が大事です!!
できればエンジンをかけて、切って、1分後位に見るのがいいと思います。

知っての通り、S2000のエンジンはオイルが良く減ります。 スポーツ走行をすれば、更に劇的に減ります。
余談ですが、私が買った車は、O/H後3000Kmしか走っていませんでしたが、1000Km走ったら、2.4Lもオイルが減っていました。もし気づかずに2000Km走ってたら空っぽです。
まあ、さすがにそれは極端なのでO/Hしてもらいましたけど、1000Kmで1L位減るのは、正常の範囲内らしいです。
まあ、ロータリーエンジンだと思えばいいですね。

余談ですが、私はエンジンのオイル減りに対しては、あまり文句を言いたくありません。
レーシングエンジンの様な高回転型エンジンはオイルが減るものだし、オイルが減らない事をあまり求めると、この様な面白いエンジンが作れなくなり、つまらないエンジンばっかりになってしまうと思うからです。
ただロータリーエンジン車のように、キチンとマニュアルに書いて、出来ればオイルの量をガソリンの量のように見やすくして欲しいですけどね(笑)。
それと、ブローバイガスから出るオイルの量が凄いので、オイルキャッチタンクの設置は必須だと思います。

ちなみに 私はエンジンオイルは、オイルゲージのアッパー(Maxの目盛り)まで常に入れるようにしています。
更に大体200Km程度走ったらオイルをチェックして、1目盛りでも減っていたら継ぎ足しています。
これが、タダで出来るオイル管理です。ですから、必ず行う事をお勧めします。
(メーカーは公には、200Kmや500Kmでオイルを継ぎ足せとは言えないでしょう。)

そして次に、Gによるオイルの偏り対策です。オイルが入っていても、S2000は強烈なGを発生するので、大きなGを発生させる運転をする人は、やはりオイルパンにバッフル加工は絶対にしたほうがいいと思います。
元々エンジンには、バッフル加工がされているらしいですが、やはり足りないようです。
オイルの偏りは、オイルポンプの空打ち防止だけでなく、タイミングチェーンによるオイルの巻き上げや、クランクシャフトのカウンターウェイトによる油面たたきや、油面攪拌も起こします。(ちなみに、カウンターウェイトの先っぽは、油面をたたいた時のために細く尖っている)
これらを防止するためにも、バッフル加工は絶対に付けた方がいいと思います。

ちなみに タイミングチェーンによるオイル巻上げは、ノーマルのブローバイ経路ならば、ブローバイ経路からインマニに沢山のオイルを入れてしまうし、そうなれば白煙を吐くし、オイルが激しく減ります。(正直言って、ノーマルのブローバイ経路だと、ウォーターハンマーならぬオイルハンマーが起きるのではないかと心配になります(笑))
カウンターウェイトによる油面たたきや、油面攪拌は、油温を非常に上げるし、高回転ではクランクシャフト自体に大きな負荷を掛けます。
これより、私はオイルパンバッフル加工を、強く推奨します。
正直に言って、メーカーが純正で付けても良かったと思っています。(これも、もし正しくてもメーカーが公には言えないでしょう)

ちなみに油面たたきは、オイルを入れ過ぎるとどうしようもないので、オイルゲージのMaxより極端に上には入れないようにした方がいいと思います。

そして私は、油温計の取り付けも強く推奨します。油圧計よりも先に、油温計を推奨します。
油温計を付けると、温度が高すぎて気になり、怖くて踏めないから付けないと言う話を良く聞きますが、そういう状況では踏んではいけないと思っています(笑)。
これまた、油圧が掛かっていれば油温がいくら高くても大丈夫と言っている人も時々いますが、オイルには、潤滑、洗浄、防錆の他に、「冷却」と言う重要な役割が有ります。
当然LLCと同じように、温度が上がりすぎれば冷却はできないでしょう。
これらの理由より、油圧計よりも油温計を優先的に付けることをお勧めします。できれば両方有ればベストです。
油圧計は、オイルのヘタリやオイル減りの基準になる事も有ります。(同じ温度とエンジン回転数で、減ったりヘタったりしてくると油圧は下がってくる)
また、オイルポンプがしっかりと動いていて、空打ちしていないかどうかも判りますね。

油圧は、柔らかいオイルを入れれば低くなり、硬いオイルを入れれば高くなります。
また、油温が上がればオイルの粘度が落ちるので、油圧は下がります。

ちなみに、純正でもスピードメーターの下に油圧警告灯が付いていますが、あれは、コンロッドがエンジンブロックとオイルパンを突き破ってオイルが抜けて、しばらーくしてから「ピー」と鳴ります。
よって、”警告灯”というより、「エンジンが壊れましたよ」と言う”報告灯”ですね(笑)。
エンストした時以外には鳴ってはいけないものです。
外付けの油圧計も、おそらく下がった頃には既に、エンジンが致命的なダメージを負っている可能性が高いと思います。

それが、油圧計よりも油温計を優先的に付けた方がいいという理由です。
私は、油温は120℃を超えないようにしています。(クーリングする)
(ただ油温は、取る場所により結構変わるようです。私の場合はオイルフィルターとエンジンブロックの間ですが、オイルパンから取ると10℃位下がると思います。 オイルパンから取っている場合には、110℃を超えないようにした方がいいかもしれませんね。)

また、オイルの粘度も最近は柔らかいものが流行っていますが、個人的にはお勧めしません。
特に、ディーラーでO/Hしたようなエンジンに入れるのは、かなり危ないと思います。
乱暴に言うと、エンジンはオイルを先に決定して、それに合わせて組み立てられていると言っても良いと思います。
よって、それから大きく外れた粘度や性質のオイルは、本当に危ないと思います。


F20Cのような高回転型のエンジンでは、オイル管理が非常に重要なので、オイルには気を使い過ぎと言うほどに、使った方がいいと思います。

続く・・・

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