アクセルコントロール

 
皆さん、明けましておめでとうございます。今年も宜しくです。
 
さて、唐突ですが私はFF車であればどんな車であっても、ハンドルの舵角を完全に一定にして、同じコーナーを何本走っても出口のラインを10cm以内に揃える自信が有ります。 それがたとえタイヤが滑るような領域であっても変わりません。
10cmというと今はタイヤ幅が215位が主流なので、大体タイヤ幅半分の範囲内で出口のラインを一定に出来感じですね。
まあ恐らく5cmでも出来ると思いますが、滑る所まで攻めると10cm位でしょう。

これはハンドルを動かせばある程度楽に出来るでしょうが、今まで書いてきた「完全に舵角一定の運転」で出来るとなると「ほんまかいな?」と、思う人が多いでしょう(笑)。
 
もちろん、私の体は精密機械ではありませんから、ブレーキングポイントでのスピード、制動距離、ブレーキを離す位置、コーナーへの進入スピード、舵角、これらを寸分の狂いもなく毎回揃えることなんて出来ません。いえ、仮に出来たとしても、何本も走ればブレーキのμは温度で変化するし、タイヤのグリップも変化するし、エンジンのパワーだって熱が入れば変化します。 ガソリンが減れば車重も変わります。
となると、仮に精密機械で操作を完璧に同じにしたとしても、出口のラインを完全に揃えることは不可能でしょう。
今回はハンドルの舵角を一定にして、このレベルで毎回確実にラインを決める方法についてのお話です。
 

今回書くことは、「ガチで速くなる練習方法」の中でも、最も重要なポイントになります。 実はこれはもう少し先に書こうかと思っていたんですが、前回からだいぶ間が開いてしまったので先に書くことにします。
まあ重要なポイントと言っても、今までに書いてきた理論、特に小Rイン・大Rアウト走法(必読)などの話などを読めば誰でも行き着くはずです。
ここまで来ると、自分の思考力で行き着いた人も多く居ますかね??
 
「ガチで速くなる練習方法」の最大のポイントは、コーナーの入口から出口までハンドルを動かさないことです。その他にも舵角を小さくするとか、ハンドルを切っている時間を長くするなどありますが、それらは細かい話です。
マチマチのスピード、ターンインポイント、ヨーイング、進入ラインで入るのに、私が舵角を一定にして出口のラインだけは揃えられるのはなぜか?
それは、「アクセルで調整しているから」です。
もしもアクセル開度も一定にするというルールならば、もちろん私だって出口をこのレベルで揃えることは不可能です。


ん?考えてみれば当たり前かな? きっと今までの練習の中で、自然とここに行き着いた人も居るでしょう。
ここまで読み進んでいる方は解説しなくてもわかるとは思いますが、一応数式も書いておきましょうか。
車がコーナーを曲がる時に掛かる遠心力は、

F=mv2/R

でしたね。
mは車重で変わりません。Rはコーナーの旋回半径で、vは車速です。
最適解へのアプローチより、遠心力がタイヤのグリップ力と釣り合うのは
mv2/R = μmg

の状態です。
車が限界状態で旋回している時に出口で狙ったラインに乗せるためには、コーナーを走行中に旋回半径Rを変化させてやる必要が有りますね?
この式を入れ替えて整理すると
R = mv2/μmg = v2/μg

つまりRを変化させるためには、車速vを変えるしか無いわけです。
ここでアクセルを踏めば車速が上がってRは大きく。アクセルを戻せば車速が下がってRは小さい方向に行くわけです。まあ、当たり前ですね。(他にも摩擦円の理論により、加速すればタイヤの縦グリップを使うために横グリップが減るため、向心力が落ちてRが大きくなることも理由です)
これはタイヤのグリップが限界状態のケースですが、ゆっくり走っていても舵角が一定ならばこのようになりますね?
つまり、アクセルを使ってコーナリング中にRの大きさを変化させること。
これが私の定義する、「アクセルコントロール」です。
 
この理論的な話を踏まえて、ここから先が具体的な練習におけるポイントです。
それではここで新たに一つ、今までの練習にルールを加えます。それは、「旋回中にアクセルを戻す方向の操作をしない」です。
つまりアクセルは同じか踏み増す方向のみ、ということですね。
このルールには幾つかの理由が有ります。 まず実際にやってみれば分かりますが、アクセルを戻してスピードを落としてRをピッタリと調整するのはとても難しいはずです。 また、オーバースピードでコーナーに入ってアクセルを戻していくコーナリングでは、スローイン・ファストアウトが出来ないため遅いですしね。
そしてなにより大事な理由は、荷重移動と荷重変動に書いた荷重変動を起こさないようにするためです。アクセルを踏んだり戻したりしては荷重変動が起きて車の限界が下がってしまいますからね。街乗りスピードであっても日頃からこれをしない訓練をするのが良いでしょう。
 
ではこの運転をするためのコツを書きます。
まず、旋回半径Rを小さめにするイメージでコーナーに入るのが良いでしょう。 もっと簡単に言うなら、狙ったラインよりも小回りをするようなラインで進入して旋回することになるでしょう。 つまりアウト・イン・アウトではなく、アウト・イン・ミドル〜アウト・イン・ミドルアウト位のイメージでしょうか。
具体的には進入スピードは遅め、ハンドルの舵角は少し大きめ、といったイメージでしょう。 はじめに舵角一定が難しければ、ハンドルを切りたすよりも戻すような状態の方が望ましいと書いたのはこのためです。 舵角が一定だと小回りしすぎて今までハンドルを戻したいと思っていたところで、ハンドルはいじらずにアクセルを踏んで調整する感じです。
そして「旋回中にアクセルを踏み増すことでRを徐々に大きくしていき、出口で狙った場所(ライン)に行くように車を導いてやる」わけですね。
いわば、アクセルを使ったアンダーステア方向の修正をしていくわけです。 これは技術的に優しい上に、荷重変動が起きません。
今までに本気で練習をして来た人で、どうしても有るレベル以上に決定率が上がらないという人なら、この技術を使えば(10cm以内かどうかは置いておいて)恐らく明日車に乗ればすぐに出来るでしょう。
あ、この時にくれぐれも、視線とマーフィーの法則に書いた視線を忘れないようにですね。
久しぶりの資料映像などで書いたように、私が始めて走る道であっても舵角一定の運転がある程度出来るのは、何を隠そうこの技術を使っているからです。
 
さて、このHPをまじめに読んでいる人なら気づいたかもしれませんが、これは小Rイン・大Rアウト走法そのものなんです。 よってこれは限界走行をしている時なら、最適解にとても近い走り方なのです。
FFのコーナーリングは入り口で全て決まるに書いた「アンダー方向の修正が前提の入り方をする」というのも、この理論が前提にあります。
まあ、今までに書いてきたことはこの技術を理解し、マスターするために必要な理論だったわけですね。
 
ちなみにはじめに私が「FF車ならば」、と書いたのは、後輪駆動車だとアクセルを踏み増すことでパワースライドすることが有り得るからです。そうなるとカウンターステアを当てるはめになり、舵角一定が不可能となりますねえ……。 対しFF車ならばアクセルを踏めばアンダーステア方向、つまりRが大きくなる方向にしか行きませんからね。
四輪駆動車のケースでは車ごとの特性の差が大きすぎるので一概には言えませんが、センターデフが固定式で電子制御が入っていない車ならば、基本的にFF車に近い挙動になるでしょう。(と言うよりも、ランエボ、インプレッサSTI、GT-R以外はそうなりますと言った方がいいですかね(笑))

もちろん、この練習に駆動方式は関係ありません。 後輪駆動車でも同様に実現できるようになるのが理想で、後輪駆動車ならば絶対にパワースライド状態にならないようにアクセルコントロールすることが重要です。

もう一度言いますが、今回の技術は今までの中で最も重要なものだと思っておいて下さい。
この技術をマスターできれば、速さにおいてもかなりの所まで行けるはずです。

そして暫くこの練習をしていると、色々なことに気づいてまた次の壁がやってくるでしょう。
それに気づく頃に、また次のお話を書く予定です(笑)。

では、練習に戻って下さいねっ。


以上


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