日産オーラ試乗記


最近オーラに乗る機会があったので、久しぶりに試乗記を書いてみましょう。
 
詳しいスペックはネットに書かれているのでここでは省略しますが、オーラはノートから派生した兄弟車であり、実質的には電気自動車です。
とは言うものの約1200cc程のレシプロエンジンも搭載しているのですが、エンジンは一切駆動力に使われることはなく、発電機としてのみの役割なんだそうです。

因みに外部からバッテリーに充電することは出来ません。
まあ、とっても今時の車ですね。
 
早速乗ってみると最新の車だけあって、まるで“走るコンピューター”の様な印象を始めに持ちました。
「一体カメラがいくつ付いているんだ?」と思うほどあちこちにカメラが付いています。
バックミラーは液晶画面だし、ドアミラーの下、フロント、リア、その他にもカメラが付いているのかも知れません。
またメーター画面は全て液晶で、アナログモードにすると液晶画面でアナログの針が動く仕様です。

そして搭載される安全機能は、 追突防止機能やセンターラインはみ出し注意機能、静止状態でのアクセルとブレーキの踏み間違い警告機能、ドアミラーの死角に車が居るときの赤い三角ランプなど、これでもかといった感じです。
また車庫入れアシスト機能も上空から見た映像もあって完璧でしょう。
 
ハンドルにはマウスのホイールの様なものが付いていて、メーター画面から様々な設定を行うことが出来るのですが、まるでiPadでも触っている様な気分でした。
純正カーナビも画面がでかいし、搭載するスピーカーはBOSE製で音も良しと。
因みに横滑り防止機能はボタンでは無くこの画面の結構深い階層にオンオフスイッチがあって、切るのは結構手間ですかね。
とにかく、内燃機は搭載しているものの全体的にパソコンに近い操作感です。
 
まあハイテクの話はこの辺にしておいて次に車としてのレビューに行きましょう。
まず始めに感動したのは、ドアを閉めるときの剛性感とシートの良さです。
今時の車はこのクラスでもドイツ車の様なドアの剛性感があるのですね。
またシートは革製ですが深めで純正の割にはかなり良いと思いました。腰痛にも優しそうです。
質感も良いし、よほど攻め込んだ運転でもしない限りは純正シートのままで良いでしょう。
但しシート調整は電動ではなく全て手動です。この辺りは車格なりでしょう。
 
またハンドルはチルト機能だけでなくテレスコも付いているのがプラスポイントですかね。特に私は日本車の場合はほぼいつもハンドルが遠いことが多いので。
ハンドルは経が大きすぎることもなく、純正の中では操作しやすい方だと思いました。
サイドブレーキはスイッチの様な形状でモーター式ですが、駆動時には結構大きい音がしますかね。因みに最近増えているモーター式のサイドブレーキってどんなメリットがあるのでしょう? バッテリーが上がっても効くのでしょうか?
もしわかる方が居たら教えてくださいね。
 
 
ではギアをドライブに入れて発進。
この車は何というか全体的にガラスの面積が大きいと思います。なので見通しが良いのですが、これだけ開口部を大きく取ってもこの剛性が出せるのは凄い技術の進歩ですね。
視点が高めなこともあって低速域での運転はしやすい部類でしょう。
 
完全にモーターだけで駆動する車を運転するのは初めてでしたが、やはり驚くのは駆動力が発生する時、つまりアクセルを踏んでから駆動力が出るまでのレスポンスの良さです。
これだけはどんなに頑張っても内燃機では敵いません。しかもオーラのモーターは最大トルク300Nm!!を発生するので、一瞬ドキッとする様な加速をしてくれます。
もちろん最大馬力は低いので上は伸びませんが、30キロのトルクといえば3リッタークラスのNAエンジンや2リッターのターボ車並みです。これを瞬発的に出せるのはさすがにモーターならではですね。
とは言っても、これでも恐らくコンピューターでホイールスピンしない様にトルクがマイルドに立ち上がる様にしているのだと思われます。
ターボ車はずっとターボラグをいかに無くすかとの戦いだったのに、モーターは真逆のことをしているのだから原動機が新しい世界に切り替わったのだと感じました。
 
この車の特徴として完全にモーターだけで走る車にしてはバッテリーの容量が小さいと思いました。バッテリーは助手席の下にあるらしく、それ程大きくないため車重を軽くすることが出来ているそうです。確かに軽くすることは燃費に直結しますからね。
 
しかしながらバッテリー容量が小さいことから、アクセルを踏み込むとすぐにエンジンが掛かります。そして速度の上昇に合わせてエンジンの回転数が上がるのがモロに音で判ります。つまり、普通のハイブリッド車やガソリンエンジン車に乗っているのとそれ程フィーリングは変わらないと思いました。
しかも、速度の上昇とエンジンの回転数の上昇がガソリンエンジンとは違ってズレているので、何とも不思議な違和感を覚えました。
強いて例えるならこのズレはCVT車の様なものかも知れませんが、ズレ方がCVT車とも違うんですよね。これは独特です。
この現象は車のバッテリーの容量が小さいので、ほぼリアルタイムで発電してモーターに電気を送っているために起こるのでしょう。モーターの回転数が上がれば発電機の回転数も上げないとあっという間にバッテリーが空になりますからね。
 
このエンジンがいつ掛かるのかやエンジンの回転数というのは、ドライバーは一切コントロールすることが出来ません。
きっとアクセル開度や速度、負荷などから微分方程式を解いて必要となるであろう電力をリアルタイムで計算し、エンジンの回転数を決めているのだと思われます。
まあここら辺は単なる数学の話なので、それ程難しくはないでしょう。
 
因みにオーラにはいわゆるエンジンの熱を利用したヒーターは搭載されていません。
今は夏なので試せませんが、冬でもエアコンを付けないと寒くて仕方がないそうです。
ですがエンジンを搭載しているのだからラジエーターもあるはずだし、ならばついでにエンジンの熱を使って暖房出来た方が冬場にはより燃費が上がるのではないでしょうか?
エアコンが使う電力はかなり大きいし、恐らく暖房の方が冷房よりも消費電力は大きくなると思います。
燃費にこだわる車なのだから、ここは日産のエンジニアたちに1つ提案したいところでした。
 
またこの車は回生ブレーキが超強くて、フットブレーキを踏んだ並に効きます。
この効きはモード切替で選べるのですが、燃費を優先したモードでは確か0.6G程度の減速Gが発生するそうです。なので普通の運転では、まずフットブレーキを踏むことはありません。
ですがアクセルオフでも減速Gが一定ではなく減速と共に強まるので、回生ブレーキを上手く使うには慣れが必要でしょう。
 
またブレーキの負荷が少ないためか、リアはドラムブレーキになっています。
因みにフットブレーキも必要にして十分良く効きました。
 
さて、次にハンドリングですが、私の経験上、エントリークラスであっても日産車というのはトヨタ車などと比べて良く曲がるイメージです。
思ったよりも曲がるので少しドキッとするのが日産車の特徴だと思っていました。
オーラについてもそれは受け継がれている気がします。
 
もう少し詳しく書くと、本当の初期の舵の効きというのは、それ程でもありません。
何というか、前輪のスクラブ半径がポジティブ方向になっている様な感触でした。
分かりやすく言うと、ホイールを少し外に出した(ツライチ方向)フィーリングです。
(実際にこのクラスのノーマルにしてはタイヤがフェンダーに近い)
メーカは普通はゼロスクラブに設定すると思いますが、この車がゼロスクラブかと言われると「?」といったフィーリングでした。
 
なので本当のド初期はマイルドですが、ヨーが出だすととても良く曲がるフィーリングです。クイックと言うほどではありませんが、シットリと且つキレの良い曲がり方でしょう。
「しなやかなのにコシがある」という表現は良くされますが、強いて例えると、しなやかなゴムの中に太い針金が通っている様な、芯がしっかりしたシットリさです。
横滑り防止機能を切っていないし今回は振り回しはしませんでしたが、きっとスライドコントロール性も良いと思います。

サロンメンバーがほぼマスターしている荷重曲げもきっとやりやすいでしょう。但しその後のトラクションステアまで行けるかというと、パワー的にギリギリかな?と思いました。
というか、意外と車の限界が高いんですよね。タイヤも大きいですし、ちょっとやそっとじゃスキール音すら出ません。
トラクションステア状態は多分モーターがしっかりトルクを出してくれれば行けると思いますが、制御が入ると出来ないかも知れません。
まあ低速ならば恐らく出来ると思いますが。
 
マーチやノートはトラクションステアにもって行くのが楽でコントロール性も抜群だったので、オーラもそれを踏襲していてくれていると面白いんですけどね。
もともと日産のFF車はオーバーステア傾向のセッティングが多かったので多分出来ると思いますが、VDCオフは試していないので不明としておきましょう。
 
因みに高速安定性もこのクラスにしては十分です。きっと空力も優れているのでしょうね。
 
それにしてもいつも思うのですが、高剛性ボディーに新品のサスペンションと純正タイヤの組み合わせというのは、タイヤのインフォメーションが抜群に良く伝わってきますね。
どこまで攻めてもこれから車がどう動くかが手に取る様にわかるため怖くないし、完璧にコントロール出来る気がします。
 

総評して、オーラは極めて今風の車だと思いました。
最先端の技術に触れてみたい方は選んでみるのも面白いかも知れません。
 
但し、純粋な“走り”に関しては、これといって特筆する部分は無いでしょう。今時の車としては、とても普通です。
一言で言うと、燃費と安全性に全振りした車だと思いました。
 
価格が高いことも含めて少なくとも若者が乗る車ではないかな、と言うのが正直な感想ですかね。
 
以上、オーラの試乗記でした。

 
P.S
最近ウェブの更新をしていませんが、その理由はモチベーションが下がったのではなくエネルギーをサロンに全振りしているからです。
サロンでは常にとても濃い内容を書いたり話したりしていますので、興味がある方は是非遊びに来て下さいね!
 
 
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