第3の曲げる力  新型GT-Rはなぜ速いのか?編


さて、前回の続きです。

この「第3の曲げる力」ですが、私はこれを「縦に曲げる力」と呼んでいましたが、最近になってほぼ同じ物を表す便利な言葉が出てきたので、ここではそれを使わせてもらいます。

その名は、「トラクションステア」です。

知っての通り、これはR35GT-Rが登場して与えられた、新しい曲げる力です。
新型GT-Rのために日産が名付けた物みたいですね。
(厳密には、それより前にランエボ等にもあったそうですが、ここでは省略します)

ちなみにR35GT-Rは、色んなサーキットで驚異的なタイムを記録していますが、どうやらその秘密は車重やパワーではないようです。
世界には、もっと軽くてパワーのある車がたくさんありますからねぇ。
つまり乱暴に言うと、R35GT-Rはコーナーが異常ともいえる程、とてつもなく速い訳です。

DVDで見た話ですが、開発者のインタビューによると、R35GT-Rの出す最大の横Gは、2Gにもなるらしく(ホンマかいな?)、これはレーシングカーの領域らしいですね。
もちろん、R35GT-Rは純正のラジアルタイヤで、です。
ちなみに、NSXの横Gが最大で1Gなので、その倍だと言えば凄さがわかりますかね??

しかしGT-Rは車のレイアウトだけ見ると、エンジンはミッドシップではなく前に載っているし、車重は異様に重いし、ボディーも決して平っぺったくなく、重心も高そうですねぇ。 よって空気抵抗も、それほど小さくはしにくいでしょう。
(Cd値は低くても、前面投影面積が大きそう)

レイアウトで今までの車と比べて新しく目に付く所と言えば、独立型トランスアクスル位でしょうかね。(ちなみにこれについては、日産のHPに詳しく書いてあります)
それでも、前後重量バランスで言えば、フロントヘヴィーでヨーは大きそうです。
それなのに常識外にコーナーが速いのは、他に秘密が有るのでしょう。
まあ、その秘密こそがこの、「トラクションステア」だと私は考えています。(私の考えなので、正解かどうかは分かりません!)

つまりこの、「第3の曲げる力」の威力はとてつもないという事になりますね。

そしてこの「第3の曲げる力」を使うというのは、私が最後に行き着いた車の曲げ方と、理屈は基本的に同じです。
(まあ個人的には、R35GT-Rの登場によって、持論の正しさが証明されたような気がして少し嬉しかったですが。)

余談ですが、私はR35GT-Rを色々なプロドライバーが運転するオンボードビデオを見ましたが、このトラクションステアを使いきっているドライバーは、唯一開発ドライバーの鈴木利男氏だけのように見えました。
他のドライバーは、まだ「第3の曲げる力」を上手く使えずに、アクセルオンでリアをスライドさせてしまったりするのを良く見ます。

実際に、ポルシェが自社のプロドライバーにR35GT-Rでニュル・ブルク・リンクを運転させたら、鈴木利男氏よりも20秒以上遅かったような話もあります。(まあ、だからスリックタイヤ疑惑の様なクレームが来たんでしょうが…)
それだけ、この「第3の曲げる力」を使いこなせる人はまだ居ないという事ですかね。
しかも あれだけ、「第3の曲げる力」を使いやすいように電子制御を行っていても、です。


さて、R35GT-Rの話は一旦置いておいて、ここでとても重要な事は、実はこのトラクションステアと言うのは、「前輪が駆動している車には全て存在する」、と言う事です。
つまり、普通のFF車にも4輪駆動車にもです。
R35GT-Rのトラクションステアは、電子制御で曲がりたい時に前輪の駆動配分を最適に変えたりしているだけで、他の車でもドライバーの操作によってそれと同じ事が出来れば、トラクションステアと同じ効果を得られる訳です。
実は前に説明した、「スライドを継続するためのアクセル」という技術は、このトラクションステアの効果を利用しています。

R35GT-Rは、今までの常識(パワーや車重など)から考えると、公開したニュルでのタイムが速すぎて、世界のスポーツカーメーカーから、「Sタイヤやスリックタイヤを履いていたのではないか?」というクレームが来たのは有名な話ですね。
同じ様に、もしこの「第3の曲げる力」の技術を使えるようになると、それこそ練習に勧めたようなファミリーカーでも、R35GT-Rの様に今までの常識では有り得ない速さで走れる ようになります。

それでは、この「第3の曲げる力」について、詳しく説明して行きましょうか。

続く…。


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