サスペンションを物理するにあたり


えー、ついに手を付けてしまいますね、この項目に(笑)。
始めにざぁっと、大事な事を書いておきましょう。

足廻りの話は、自動車工学系の書籍にしろ、雑誌にしろ、HPにしろ、情報がたくさん出ていますね。
私も昔は、自動車工学系の書籍で勉強した物です。
そこで、情報があふれる程たくさんある中で、敢えてこのページで同様のテーマで書くとしたら、どのようなコンセプトで書くのが良いのか?と、ちょっと考えていました。
そして 結果私が選んだのは、始めのポリシー通り、「高校生から理解できる、わかりやすい物」と言う物です。

いくら説明を書いている人が、「我ながら論理的で、完璧な説明だぁー」と思った所で、読む人が分かりにくく、誰も読んでくれなけば全く意味が有りせんからね(笑)。
これでは、著者のマスタベーション、と言うと言い方が悪いですが、独りよがり的になってしまいますからね。
よってここでも分かりやすさを最優先にしたいと思います。
そのために、出来る限り自動車の専門用語系や専門的な表記や数式を使わずに、あくまで高校物理の「力学」で習う事の延長にある様な説明をしたいと思います。

ただもちろん、わかりやすいからと言ってレベルを低くするつもりは有りません(笑)。
私なりのアプローチで、わかりやすく、且つプロでもついチラ見したくなるような(笑)、そんな内容にしたいと思っています。


さて、この足廻りの物理と言うのは、非常に簡単なのですが、非常に複雑です。
ん?言っている事がムジュンして聞こえますか??
しかし物理学には、簡単で複雑な物もあれば、単純だけど難しい物もあるのです。

例えば、特殊相対性理論の「時間が延びる」とか、「質量とエネルギーが等価である」とか、量子力学の不確定性理論なんてのは、とっても単純な数式で表せますが、概念が非常に難しいですよね?
逆に自動車では、高校で習う古典力学しか使いません。 そしてそれ一つ一つはとても簡単で、単純です。
ただ車は、その単純で簡単な要素を持つ部品が複雑に絡みあって作用している(動いている)ため、それによってもたらされる結果は非常に複雑になります。
いわゆる、「複雑系」ってやつですね。 よって自動車の動きを一つの単純な数式で、ズバッと表す事は出来ないのです。

よって、有る事が変わるとある部品の作用では、コーナリング限界が上がるように働いても、他の部品がコーナリング限界を下げるように働いて、もしも下げる作用の方が大きく出るとトータルの結果として、コーナリング限界は下がる、と言った 様な事が起きる訳です。

例えば、車高を下げると重心が下がると言う作用が働きますが、ロールセンターが下がる、アライメントが変化する、という副作用も起きます。
コーナリングの限界速度を上げるために、どちらの作用が必ず勝つかは、決まっていません。 ケースバイケースです。
全ての要素の点を足し合わせて、合計がいちばん高得点となるセッティングがどこかにあり、そこがコーナリング限界が一番高くなる所です。
つまり、全てには「最適値が有る」訳ですね。

例えばコーナリング限界速度の簡単な例を出すと、車高は下げれば下げる方が限界が上がるとか、キュンバーは付ければ付けるほど限界が上がるとか、ロールは減らせば減らす程が限界が上がるとか、そう言う事は当てはまらない訳です。

あくまで全ての要素の作用を複雑に足し合わせた物が結果となり、更にそれぞれの要素には「最適値が有る」と言うのを覚えておいてください。
特に足廻りにおいては、その複雑さがゆえに、望んだ作用よりも副作用が強く出てしまう事が良く有るのです。
例えば、コーナリングスピードを上げようと思ってキャンバーを付けたら逆にコーナリングスピードが落ちてしまったり、トラクションを稼ごうと思ってLSDを入れたら逆にトラクションが落ちてしまう 、なんて事も大いにあり得る訳です。

そしてこれは、セッティングだけでなく運転においても、全く同じです。
これも一つだけ例を出しておくと、「アウト・イン・アウト」走行と言うのが有りますよね?
これは、コーナーのR(半径)を少しでも大きくして平均スピードを落とさないと言う物ですが、スピードが落ちない代わりに、インベタで走るよりも大回りしてますよね?  もっと言えば、遠回りしている訳です。

これも、最適なラインが有って、常にギリギリにRを大きくする「アウト・イン・アウト」で走るラインが一番速いとは限りませんね。
どのラインが最適かは、これ又車などによって変わり、ケースバイケースです。
スピードの出ない車であまり大きなRにすると、「単に遠回りしているだけ」になりますよね?
この場合は、スピードのロスよりも、遠回りする事による距離のロスの方が大きくなる、それが入れ替わるポイントがどこかに有る訳です。
何度も言いますが、全てには「最適値が有る」のです。 それを常に念頭に入れておいてください。

そしてその全ての作用を足し合わせた時に、答えが最大となる最適値を見つける事が、速く走るセッティングや、運転になると理解しておけば良いと思います。(これ、重要です!!)

それでは次回からは、具体的な話に入って行きましょう。
あ、それと、記事の更新頻度は気長に見て下さいね(笑)。


Back        Top