スライドを続けるためのアクセルを学ぶ(実践編)


さて、それでは具体的な練習方法について、説明してみます。

始めに実際に練習するにあたり、最も重要な事を書きます。
それは、

リアタイヤのスライドを継続する運転と、スライドを止める運転との最大の違いは、ブレーキを離してから、アクセルを踏むまでの時間です。

スライドを継続する状態を作るためには、 リアタイヤに荷重が乗る前、つまり前荷重でまだリアタイヤのグリップが小さいうちに、前輪がキッチリと引っ張る必要があります。
この練習では、「曲げるためのブレーキを踏んで離す」、「ハンドルを切る」、「アクセルを踏む」、の3つの操作が、完全に1アクションです。
外から見ていると、殆ど同時に操作しているように見えるようです。

つまり、リアタイヤがスライドして、どのペダルも踏んでいない、「あー、リアタイヤが滑って車体が回転しているなー」と感じる時間がほとんど存在しないわけです。
イメージで言うと、リアタイヤが滑ったのを確認する前にアクセルを踏む感じですね。
リアタイヤの「スライドを止めるためのアクセル」が、滑ってから「止めよう」と思って踏むのに対して、こっちはそれでは間に合いません。
確実にリアが滑ったと感じてからアクセルを踏むのでは、手遅れになる場合が多いでしょう。

つまりこのアクセルは、あらかじめリアが滑るのを予測して、素早く踏む必要があります。
もちろん、予想が外れてリアタイヤが滑らなければ失敗します。
それが、この技術の難しいところですかね。

ちなみにターボ車やオートマ車だと、素早くアクセルを踏んでも、実際に前輪の駆動力が発生するまでに時間が掛かるので、より一層難しくなります。 いわゆる、ターボラグやオートマのレスポンスの悪さのせいですね。

ちなみにオートマのターボ車だと、私も相当苦労します(笑)。
これが、練習に勧めた車で、NAのマニュアル車が一番楽だと書いた理由です。
また、「有る程度パワーが有った方が楽だ」と書いたのも、この時に前輪が引っ張る力が強い方が、リアタイヤを滑らせ続けやすいからというのも、理由の一つです。


さて、それでは今回も、この練習のルールを書いてみます。

1、アクセル編

まずはアクセル操作です。
アクセルは一度オンにしたら、アクセルは一定か踏み増す方向で、絶対に戻さないように。
戻せばエンジンブレーキにより、また前荷重になって、当然リアの荷重が抜けてスライドを続けやすくなります。

実はこれは、初期の回転量の与え方に失敗した時などに、姿勢を作り直すために使えるテクニックなのですが(詳しくは、後述)、当然その様な状況にならないようにするのがベストです。
よって、練習ではこれはやらないように。

逆にリアのグリップが戻りそうになったら、アクセルを踏み増してスライドを継続させられるようになれば、上手く出来ています。
アクセルは早く全開に近く出来れば出来るほど、決まっています。

2、ハンドル編

次にハンドル操作です。
ハンドルの舵角は一定がベストです。切り足さないといけない時は、初期の車体の回転不足です。
逆にハンドルを戻す必要がある時は、恐らくアクセルを踏むタイミングが遅いためでしょう。
(例えばシビックと4駆ターボ車の比較映像のシビックの運転は、典型的な初期の回転不足による失敗です。)

ちなみに上達すると、完全に一定の舵角で、またアクセル開度も一定で出来るようになります。
これが決まると、とっても気持ちがいいと思います(笑)。
ちなみに、送りハンドルのサンプル動画の一発目の左コーナーは、ハンドルが一定になっていますね。


そして、最後のルールは、この練習もスピードを出さない事です。
ハンドルを切る時のスピードは、スピンさせる練習と基本的に同じです。
これもあまりスピードを出すと、慣性でスライドしているのか、アクセルでスライドしているのかが判らなくなりますからね。


まあ車種により、若干の個体差は有ると思いますが、練習方法とルールは概ねこんな感じです。

後は、とにかくリアタイヤのグリップを完全に戻さない事ですね。

グリップを戻さずに、最低でも90度以上曲げられるようにする事を取り敢えず目標としてみて下さい。
180度以上出来れば完璧です。

ちなみに、この練習が上手く出来ているかどうかは、リアタイヤのスキール音で良く判ります。
まず、リアタイヤが鳴いていない場合は、殆どリアタイヤが滑っていない可能性が高いですね。
非ハイグリップタイヤでは、タイヤが滑るとかなり鳴くと思います。

そしてその鳴き方ですが、舵を入れてアクセルを踏んだ入り口から、スライドが終わる最後まで、同じ音量と音程で鳴いているのがベストです。

タイヤのスキール音と言うのは、スリップアングルや荷重によって変わる物です。
スリップアングルが大き過ぎると一般に音量が大きく、高音になる傾向が有るようです。
(例えば、スピンする時の最後の方とか)


また、荷重が乗っていないとスキール音は高音になりがちです。
よって、入口から最後まで、同じ音量と音程で鳴いていれば、同じスリップアングルと荷重を保てているでしょう。
更に、アクセルオンではリアに荷重が乗っているので、リアタイヤとフロントタイヤの音程が近くなってくると思います。
よってフロントタイヤの音がリアタイヤよりも高音の時は、車体の回転不足、逆の場合は回転し過ぎですかね。

まあ実はこの音ってのは、サスペンション形式などにより前後で微妙に違う事が有るので、完全に同じにならなくとも、近づけていけると良いでしょう。

ちなみに私の経験上、多くの人の場合、リアタイヤをスライドさせる時に前半は音が小さく低く、後半に行くに従って大きく高くなります。 これは、駆動方式を問わず、です。

つまりこれは、初期にあまり滑っておらず、後半に行くに従い大きく滑っている事になります。
しかしこれはNGです。
リアタイヤのスライドは、どちらかと言うとコーナーの後半に行くに従って止まって行く方向にしなければいけません(完璧に一定なのがベストですが)。

よって、練習では初期からキッチリ滑らせるように心がけ、その確認のためにスキール音を聞くと参考になるでしょう。
その際、多くの車では窓を少し開けた方が良く聞こえると思います。
また、爆音マフラーを付けていると聞こえにくいので(笑)、これもノーマルが一番ですね。

そしてこの練習も、上手く出来るようになってきたら、次にもっと遅いスピードで出来るように練習してみて下さい。
これもスピンと同じく、スピードが遅い程難しくなります。 全ての操作のタイミングが、ドンピシャ決まっている必要があるので。
更に、ブレーキを踏むまでの助走スピードも遅く出来れば、かなり上手くなってきているでしょう。

もちろんそれには、今までの荷重でスピンさせる操作が出来ている事が不可欠です。
先にそっちを書いたのは、その為ですから。

ただ、大きな摩擦円を逃すな!!に書いた物と違い、ハンドルの舵角はそれほど小さくすることを心掛けなくて良いです。
それよりも、遅いスピードで出来る方を目指した方が良いでしょう。
このスライドを継続する運転は、ハンドルを思いっきり切ってもロスは余り有りません。
むしろこれは、舵角の大きさを上手く使ってやる運転だと理解しておいてください。
どうしてそのようになるのかは、後ほど詳しく説明します。

一応この練習のコツを書いておくと、とにかくブレーキを離してからアクセルを踏むまでの時間を短くする事を心掛けて下さい。 イメージ的には、0.1秒位です。 出来る限りすぐに駆動力が立ち上がるように。
その為に、オートマ車ならば出来るだけ低速のギアに固定して、キックダウンしないようにした方が良いでしょう。
キックダウンしてしまうと、大幅に時間をロスします。

またこの練習は、ダンパーがヘタっていると著しくやりにくくなるので、ヘタリを感じたら新品に出来ればベストです。(もちろん、純正です)
またどうしても上手く出来ない場合には、始めはリアタイヤの空気圧を規定圧よりも、少しだけ(0.2キロ程度)上げてやるとやりやすいでしょう。 ただ逆に言うと、リアタイヤの限界は下がるし、スピンしやすくなるのでやり過ぎには注意してください。

あそうそう、後スピンの練習と違ってこの練習だけは、絶対にオープンデフの車でやってください。
LSD(ビスカスなど純正でも)が入っていると、初期にミスっても無理やり出来てしまったりしますので。
余談ですが、フルノーマルのインテR(DC5。純正でヘリカルLSD付き。)を運転して試した時には、リアのグリップを戻さずに、半永久的に定常円旋回が出来そうでした。 (まあ他人の車なので、タイヤが無くなるので程々で止めましたが(笑))

実はLSDが入ると、車の動きが全く違う物になるのですが、それも後ほど詳しく説明します。
前にも書きましたが、始めから機械式LSDなんか入れると上達が遅くなるだけなので、絶対に入れないように。


さて、今までやってきた荷重曲げの練習、スピンの練習、スピンを止める練習、そして今回の練習ですが、もしかしたらちょっとイメージがわかない人が居ますかね?

それでは久しぶりにちょっと動画を紹介します。
たまたま昔、友人に頼まれて運転した、ちょうど良いのが有りました。

これは、ブレーキで前荷重を作り、スピン挙動を作ってすぐに止めて、すぐにスライドを継続するアクセルを踏む、という一連の操作をやっている物です。
車は、ノーマルのFFの走りを見てみると同じものです。 タイヤは純正のラジアルタイヤです。

資料映像1

見ての通り、スピードなんてメチャ遅いです。 でも、スキール音が凄いですね(笑)。
外から見ると、余り滑っていないように見えますが、実際は結構滑っています。
ちなみに初挑戦の車なので、1、2周は今一、3周目が一番決まっています。 実際にスキール音が完全に一定ですね。
手前のコーナーのタイヤが鳴く位置や、奥のコーナーでブレーキランプが消えてから、車体が曲がり始めるまでの時間の短さなど、良ければ練習の参考にしてください。

ちなみに、映像は限界が低そうな車ですが、ハイグリップタイヤを履いたスポーツグレードの車でも、操作のタイミングさえキッチリ決めれば、同じ低いスピードで出来ます。(スイートスポットは狭くなりますが)


さて、 なぜこの練習をすると車を速く走らせられるかについては、後ほど詳しく説明します。
あとはとにかく、反復練習ですね。 (有る程度出来るようになったら、次は百発百中で決める事を目指してみてください)
ここに書いた通りにやれば、比較的短時間でマスターできると思います。


今までの全ての練習をマスターして、このステップまで出来るようになれば、どんな車でも車が持つ最大の性能を出している状態、私が「 コントロールゾーン」と呼んでいる状態に車を入れるまで、あと少しです。

ちなみにコントロールゾーンとは、最近のFF車ならば、フルノーマルの状態でほぼ全ての車が持っている物で、例えエコタイヤを履いたパワーの無いファミリーカーでも、横Gで首が痛くなるほどの性能を発揮するような状態です。
もしかしたらこれは、メーカーの開発者が想定する以上?の性能を発揮しているかもしれません。
(と、試乗時等にディーラーの人にも良く言われます(笑))

そこまで出来るようになると、逆にハイグリップタイヤや足廻りの変更は、バランスが崩れるのでいらないと感じ、私がこれらをいじるなと言った理由が分かると思います。

まあこの「コントロールゾーン」については、詳しくはこれから書いていきますので、是非ここまでの練習をマスターしてみて下さい。
 

続く…。

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