後輪駆動車のトラクションステア効果


さて、だいぶ前に出題した後輪駆動車でのトラクションステア効果の出し方の話をそろそろしてみましょうか。
(要望も結構多かったので。)

さて、自分の答えは出ましたか??  FF車のトラクションステアのしくみが理解できれば、ある程度想像は出来ると思います。
まず先に、これまでに書いたFF車のトラクションステアの話(第一八部から第二六部)を読んでくださいね。
そっちを理解している事を前提として書きますので。

結論から言うと、後輪駆動車でのトラクションステアは、FF車でのトラクションステアと理論も技術もほとんど変わりません。
タイヤの縦のグリップを遠心力に対抗する力、つまり曲がる力として使ってやる事は全く同じですからねっ。
ただ当然、後輪駆動車では、駆動輪の舵角が切れないので、その部分は違ってきますね。
(よって、ステアという言葉を入れるのは厳密にはおかしいかな?)

つまり駆動輪の舵が切れないという事は、車体ごと円の中心方向に向けないと、駆動輪のタイヤの縦グリップを遠心力に対抗する力として使えませんね?
よって、理論上はFF車の場合よりも車体の角度を少し深めにつける必要があります。

ちょっと図を書いてみましょうか。


図1

こんなイメージです。

後輪駆動車でのトラクションステアがFF車のトラクションステアと違う点は、操舵輪が駆動していないため、姿勢を深めに作る必要があることと、後輪は加速時(アクセルオン時)に荷重が増える方向になるため、より大きなグリップを発生できる事です。
つまりこれが出来るようになると、FF車と比較して、より大きな遠心力に対抗する力が発生できる、つまり速く曲がれる事になるはずです。
また、後輪駆動車は一般にFF車と比べてパワーが高い物が多いので、マスターすればかなり強力な武器になるでしょう。

とまあ、理論はこんなところでわかりますかね?
基本的にFF車のトラクションステアと同じですね。

またトラクションステア効果を出すためのテクニックも、FF車とほとんど同じです。
というか、ある所までは全く同じと言って良いと思います。
逆に違う方法でトラクションステア効果を出している人がいたら、恐らくパワースライドをしてしまっている確率が高いと思います。


後輪駆動車のトラクションステアも、FF車と全く同じように荷重曲げから始まります。
よって練習する順番としては、荷重曲げ、荷重曲げでスピンさせる練習スピンを止めるめるためのアクセルスライドを続けるためのアクセル、これら全てをマスターする必要があります。

荷重曲げでスピンさせるところまでは、おそらくFF車で行うよりも簡単だと思います。
FF車はフロントが重いため、車がアンダーステア方向に行きがちで、どうしてもスピンさせにくい事が多いですが、後輪駆動車は重量配分がFF車よりもバランスが良いため、FF車と比べて比較的楽にスピンさせられるでしょう。
ただ、「スピンを止めるためのアクセル」だけは、パワーがある後輪駆動車ではあまり雑に踏むとパワースライドしてしまう事があるため、そこのアクセルコントロールのみFF車よりも難しいと思います。

よって後輪駆動車で大事な事は、とにもかくにも、「パワースライドさせない事」です。
これがトラクションステア効果を出せているか、いないかを分ける、非常に重要なポイントとなります。
成功させるためには、これまでに書いてきたFF車におけるトラクションステアの出し方と、全く同じ操作をすれば良いでしょう。
そのように操作すれば、まずパワースライドにはならないはずです。

それでは早速、実際の操作方法について書いてみましょう。

まず始めに、後輪駆動車でも確実に「ブレーキによって車を曲げる」事を意識する事が重要です。
ブレーキで強い前荷重を作れば、リアタイヤの荷重は抜ける方向に行きますね?
その状態でハンドルを切って、リアが浮いているような状態でスピン挙動を瞬間的に作り、リアのスライドを止めたいところでアクセルを踏むことで、抜けていたリアタイヤに荷重が掛り、リアタイヤのグリップは戻る方向に行きます。
感覚的にはアクセルオンによって、浮いているリアタイヤを着地させるようなイメージです。
あくまでパワーを掛けてからリアがスライドを始めるのではなく、荷重が抜けてリアが自然に滑りだすことが重要です。
荷重が抜けている状態からアクセルを踏むと、荷重が後ろに戻るため、はじめに必ずスライドは止まる方向に行きます。
いきなりパワースライドに移行することは、まず有りません。

もちろん、完全にリアのグリップを戻すとトラクションステア効果は得られないので、アクセルでスライドは継続させるわけですが、あくまで方向としてはスライドを止めるイメージです。
逆にパワースライドは、リアに大きい荷重が乗ってベッタリとグリップしている状態からアクセルを踏み、リアタイヤを横に滑らすもので、荷重曲げとは全く異なるものです。
またパワースライドの様にリアタイヤに荷重が掛っている状態からスライドさせてしまうと、タイヤは最大の仕事をする(グリップを発揮する)ところ(スリップ率)を超えてしまうため、それを遠心力に対抗する力として使うのは難しいでしょう。
パワースライドをすると、恐らく普通のCPを使った走り方よりも、遅くなると思います。

ちなみに、荷重曲げから始まる「トラクションステア」と「パワースライド」の違いを一番簡単に区別する方法は、「カウンターステアが当たっていないか」を見ることですかね。
荷重曲げがからトラクションステアの流れがドンピシャ決まると、カウンターステア、というか修正舵は一切切る事は無く、一発目に切った一定の舵角で決まります。
逆にカウンターステアを切っているようでは、トラクションステア効果は発生できていないでしょう。
私の考えるトラクションステアは、「駆動していないタイヤのグリップも最大限に使う」ものです。
あくまで、4つのタイヤのグリップをすべて最大限に使うために考えたものですから、後輪駆動車では、フロントタイヤのグリップも最大限に使っていなければいけません。
例えば逆ハンドルを切っているという事は、フロントタイヤのグリップはほとんど使っていないことになりますね?
よってこれは当然ロスとなります。

また 上手く決まると、ブレーキを抜いてからコーナリングが終了するまで、リアの外側のバネは縮む一方向になります。
バネが伸びる方向に行く瞬間が有ると、失敗です。
まあ「ガチで速くなる練習方法」に書いた、荷重変動はしないという事ですねっ。

後輪駆動車で上手くトラクションステア効果が出せてから気をつける事は、アクセルのコントロールですかね。
これだけはパワースライドが起きないFF車とは違います。
この状態で雑にアクセルを踏み込むと、パワーの有る車ではズバッとタイヤが滑る、パワースライド状態に移行してしまいます。
ベッタリとグリップするのでもなく、ズバッとスライドするのでもない、ちょうどその間の状態をコーナーの出口まで維持しなければなりません。
この時にカウンターステアを当てるようでは確実に失敗していますが、後半に行くに従いアクセルでヨーを作って少しハンドルが戻っていくような操作ができていれば、かなり決まっているでしょう。
やがて出口に行くに従い横方向のスライドが消え、縦方向のホイールスピンだけが一瞬だけ残って、そこから半グリップ加速が出来るようになれば完璧です。

この技術は、ターボ車などのトルク変動が大きい車では、アクセルコントロールを繊細に行わないと難しいでしょう。
初めはNAの車の方がやりやすいと思います。

とまあ、こんな感じです。

ちなみにパワースライドは失敗だとさんざん言いましたが、コーナーによってはパワースライドを一瞬使ってからトラクションステア効果に移行するという、高等テクニックも有ります。
ただ極端に難しいため、始めはパワースライドは一切無しだと思っておいて良いでしょう。
(この話はまた書くかもしれません)

個人的には、トラクションステアとパワースライドとキッチリと区別するためにも、やはりFF車から練習を始めるのがお勧めです。 あと、練習に進めたような限界の低い車には、後輪駆動車は中々無いですしね。

後輪駆動車でもコツは、FF車と同じくブレーキを離してからアクセルを踏むまでの時間ですかね。
まあ全てがFF車と全く同じ操作なので、ここでは省略しますね。
FF車で出来るようになれば、恐らく比較的簡単に後輪駆動車でも出来るようになると思います。

以上。

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