2000円で古い日本車のハンドリングをBMWのハンドリングにする 製作編


では具体的な部品制作に入ります。 まあ部品と言うほどの物ではありませんが。

必要なもの:

ゴムシート(3mm)
ゴムシート(1mm)
下敷き
両面テープ
アルミテープ
ボール紙
シリコングリス

以上です。 全てホームセンターで安価に手に入るものでしょう。
ゴムシートの必要な量は2ドア、4ドアで異なるので適宜用意して下さい。

では制作手順です。

ストライカーの部分を型紙で作ります。 時々、DIYで同等品を作る際にストライカー以外の場所に施工する人が居るようですが、ドアもピラー側もストライカー部が一番頑丈に作られているはずなので、私はストライカー部に施工しました。

本部品のメインはゴムシートです。 分厚いゴムを始めから使うと切るのは大変だし、ドアが閉まらたかったりするので、3mm程度の物を重ね合わせるのがお勧めです。 そして調整用に1mmのゴムシートもあると便利でしょう。

まずストライカーの形にゴムシートをカットし、フックの部分に穴を開けます。



図1 メインとなる3mmのゴムシート

同じ形のものをドアの数×重ねる枚数分必要なので、必要な数を用意しましょう。
一般にドアとビラーの隙間は10mm程度は空いていることが多いと思います。 なので始めは3mmのゴムシートを2枚重ねて6mmから実験してみると良いと思います。
まずはこの状態で、ドアがスムーズに閉まることを確認します。 これくらいならば特に接着剤やテープなどで止める必要もないでしょう。

とりあえず、この6mmの状態で運転してみて下さい。 車種にもよりますが、それでもハンドルを切ると、十分に体感できるほど変化していると思います。コーナリング時の体感度で言うと、接着剤補強と同等かそれ以上かもしれません。
体感の内容をを具体的に言うと、まずハンドルの舵角が小さくなると思います。 これはTRDのウェブにも書かれている効果ですね。
6mmではまだ隙間があるはずですが、それでも体感できるということは、いかにドアの開口部が走行中に変形しているかが判りますね。

ドアの開け閉めがキツくならないここで止めておくのも大いにありでしょう。 それでも暫くは十分に満足できると思います。
その場合はゴムシートのドアと接する面に、シリコングリスを塗っておくと滑りが良くなるし、ゴムシートが削れにくくなるので良いでしょう。
因みに石油系のグリスだとゴムにダメージを与えるので、ライフを考えるとシリコングリスがお勧めです。



ただし、ここから先を更に詰めていくと、BMWの様な魔法のハンドリングに変化するポイントがあるのです。
なのでここから先は、タワーバーで言うところのボルトをキッチリ締める作業になります。 つまり、隙間を徹底的にキツくしていく方法です。

まずは調整用の1mmのゴムシートを同様にカットし、表に来ないような場所に差し込みます。 表に薄いシートが来るとドアを閉めるときにめくれ上がったりするので注意して下さい。
恐らく1mmを足しただけでもかなりハンドリングが変わると思います。
また車による個体差があるので、ドアの開閉があまりにキツくなるようなら、取り外して下さいね。


更に詰める:

とまあ、以上程度のことはDIYでやっている方も多く居ると思います。 しかしながらこれ以上隙間をキツくするためには結構大変で、色々な試行錯誤がありました。
またこれ以上キツくしてもあまり変化がない可能性もありましたが、何となく限界までチャレンジしてみようと考えました。

では途中は省略して、最後に至った方法とその結果を書きましょう。
まず、いくらシリコングリスを塗っても金属のドアとゴムシートがドアの開閉のたびに擦れ合うわけなので、隙間をキツくする程どうしてもゴムシートが削れて最後にはボロボロになってしまいます。 また3mmのゴムシートが千切れたこともありました。

原因を簡単に言うとドアとゴムとの間の摩擦係数が高すぎるのです。 なのでここの摩擦係数を下げる方法を色々と考えて試しました。
そして最後に至った結論が、ドアにアルミテープを貼り、表のゴムシートの上に同じ形に切った下敷きを被せる方法です。
私が使った下敷きは100円ショップで売られているものです。

または、空になったガソリンプリカを切っても良いですよ。 これは結構頑丈でした。
つまり、アルミテープとプラスチックの間の摩擦係数は低いので、そこにシリコングリスを塗ってあげれば相当キツくしてもドアの開閉が可能となります。
この手法でかなりの所まで詰められるでしょう。



図2 右からゴムシート、下敷き、ボール紙

ですが最後にはドアの形状からくる限界があります。 ドアは並行に閉まるのではなく、円弧を描きながら扇状に閉まります
なので、ゴムシートの手前がどうしても先にドアに当たってしまうのです。 よって次にゴムシートの手間を薄く、奥を厚くするように加工してあげます。
加工と言っても、3mmのシートに1mmのシートを半分に切ったものを両面テープで貼るだけです。 これを手前を薄く、奥が厚くなるように貼り付けてあげます。



図3 1mmシートを半分に切ったものを貼る

これを噛ませることでもう1mmは厚く出来るはずです。 この方法で、ドアがギリギリ閉まるレベルまで厚みを調整します。
隙間に余裕がある場合は、1mmのゴムシートを足してもいいし、そこまで余裕がなければ下敷きをもう一枚足しても良いでしょう。

ゴムは弾力があるので、意外と無理そうでも何とかなりますよ。 ただし、キツくするほどシリコングリスは必須となるでしょう。
この状態で運転をすると、かなり変わったと感じるはずです。 もしかしたら、既にBMWの様な魔法のハンドリングになっているかもしれませんね。 もしそうなっていたら、この状態で暫く乗るのが良いでしょう。

ですが暫く乗っているとゴムが潰れて、フィーリングが変わることがあるはずです。 或いは、ここまでしても大幅にハンドリングが変化しないこともあるでしょう。
そうなると、ここから先は紙一枚ずつの調整となります。
この先はもう下敷きやゴムシートが入る隙間はないでしょう。(あるなら先に入れて下さいね。下敷きはゴムシートより硬いし調整にも使えますが、弾性を考えてゴムシートを6mm以上は入れることをお勧めします)

そこで使うのが、ボール紙です。 100円ショップでも売っていますが、これは別に買わなくてもお菓子の箱などでOKです。
ボール紙はゴムシートを外さなくても横から先込みやすいように、図2のような形にカットします。

そしてボール紙をゴムシートの隙間に横から差し込んでいきます。 この方法で恐らくドアがギリギリ閉まる所まで追い込めるはずです。
このレベルになると、恐らく1枚差し込んだだけでもハンドリングが結構変化するでしょう。
右側だけ入れると、きっと右曲がりと左曲がりが違う挙動になる程に変化するはずですよ。

2ドアの車の場合は、この手順で紙を差し込んだり抜いたりして、好きなハンドリングに調整して終了です。
実験はしていませんが、構造上、オープンカーならばより高い効果が期待できると思います。


4ドア車の場合は、事情が少し複雑になります。 基本的に前のドアをキツくするとフロントの剛性が上がり、後ろのドアをキツくするとリアの剛性が上がります。 これは明らかに体感できるでしょう。
前後の剛性バランスとハンドリング特性については接着剤補強と同じなのでそちらを参照して下さいね。

ですがこれも色々実験してみた所、面白い現象が起きました。
私は始め、前のドアをキツくして後ろは若干弱めにしたところ、好みのハンドリングになりました。 暫くそのまま乗っていたのですが、ある時、試験的にリアも限界まで追い込んでみたのです。
するとなんと、リアだけでなくフロントの剛性まで上がったのです!

ここから先は私の推論です。
私の車は4ドアセダンですが、前をとてもキツくすることでコーナリング時に恐らくBピラーが少し後方へ歪んでいたのだと思います。
ですが後ろもキツくしたことで、前のドアのストライカー部と後ろのドアのヒンジ部をBピラーで支えるのではなく、下図のようにモノコックボディの前部から後部までが頑丈な棒で繋がったように一体になったのだと考えています。


図2 茶色の線によってモボディが前から後ろまで一体となる


そしてこれは強烈に効果がありました。 まさに魔法のハンドリングに豹変です。

では次回はインプレ編です。

続く……。

 
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