アルミテープチューンについて (軽く理論編 前編)


さて、自動車という機械には多くの摺動部分、つまり摩擦が発生する場所がありますよね。
タイヤと路面もそうですし、エンジンの中や駆動系なんかも接しながら動いている部品だらけです。

まあ細かい話は置いておいて、これら各部分の摩擦により車のボディーには静電気が発生するそうです。
冬場にジャンパーが擦れ合うと静電気が発生して、ドアノブなんかを触った時にバチッときますが、それと同じことが車全体で起きているってことでしょう。

そして車に帯電する静電気はプラスの電気なんだそうです。 どうしてそうなのかは良くわかりませんが、材質などによってプラスに帯電するものとマイナスに帯電するものがあるみたいです。

物質による帯電性質

図1 https://www.seidenki.net/howto/ 様より

色々トータルして、結果的に車はプラスに帯電するってことですね。

そして厄介なことに、空気にもプラスに帯電する性質があるそうです。
よって車のボディーと空気がプラスに帯電することでこれらに斥力が働き”境界層の剥離”によって発生する乱流をより大きくしてしまうんだそうです。 って、ワードが難しいですよね(笑)。
 
そもそも空力っていうのはとても難しくて、今でも理屈がすべて分かっているわけではないみたいです。
実は飛行機がなぜ飛べるのかも良くわからない、なんて話もあるくらいですから……。

ですが、一部わかっていることもあります。
走行中の車の周りには当然、空気が流れていきます。 そしてその空気の流れる速度というのが、ボディーの近くになるほど、ボディーとの摩擦抵抗などを受けて遅くなるそうです。 まあ何となく感覚的にそうなりそうですかねえ。

つまりボディーから遠いところは速く、近いところは遅く流れることによって、空気がずっとボディーに沿って流れてくれなくなり、空気とボディーの境界面の途中で空気が剥がれて渦を巻くような現象が起きるのです。
これについては、以下の動画を見れば百聞は一見にしかず、でしょう。

 

確かに空気が境界面で渦巻いていますね。

この現象のことを“境界層剥離”というそうです。
ちなみにこの現象は、ボディーラインの傾きが負になるところ、つまり下に向かって傾いているリアガラスやテールランプなどの後端で特に発生しやすくなります。
そして渦のような乱流は負圧となるので、ボディーを引っ張る方向の力が発生します。
これが車を斜め後ろに引っ張る方向の力となり、車にブレーキを掛ける力となるわけですね。
そうなれば当然、加速力も燃費も悪くなるでしょう。 また、リアタイヤの荷重も減りそうですね。

ここでは詳しく触れませんが、ランエボ[MR以降や一部の燃費を追求している車に採用されているボルテックスジェネレーターは、この境界層剥離を減らすことを目的としているそうです。
ボルテックスジェネレーターは剥離する前の空気をわざと少し乱すことで境界層剥離を減らしたり、剥離する位置を後ろズラすことを目的としているらしいです。

ランエボの場合は境界層剥離を減らして綺麗な流れの空気をリアウィングに当てることが目的で、エコカーの場合はおそらく燃費の向上が目的でしょう。
まあ空力の話はまた改めて書く予定なので、今回はこの辺にしておきましょう。
 
話を戻しますが、車のボディーに帯電した静電気は同じプラス極同士の空気との間に斥力を発生させて、この境界層剥離による乱流を増やしてしまうそうです。(具体的になぜ増やすのかは難しいので省略しますが、まあボディーと空気との間に斥力が発生すれば、何となく剥離を助長しそうですよね)

そこで車のボディーにアルミテープを貼って静電気を放電してやることで、境界層剥離を減らして車の挙動を安定させる、というのがアルミテープチューンの理論となるわけです。
 
境界層剥離というのはいつも同じように、同じタイミングで起きるわけではなく、いつどのように起きるかわからない不確定なものです。
つまり、車体の左右で違うタイミングで起きることもあるでしょう。 車体の上下に至っては形状が全く異なるため、もちろん違うタイミングで、違う場所で、違う大きさで起きるはずです。 更に風が斜めから吹いていれば、より一層左右でバラバラとなるでしょう。

これが車体の動きを不安定にする外乱要因となっているのではないか、というのがトヨタの理屈だと思います。(まあトヨタでも厳密なメカニズムは良く解っていないって話です)
そして静電気を放電させるために考えた方法が、“アルミテープを貼ること”という、びっくりするほどシンプルな方法なわけですね。
 
ではなぜアルミテープを貼ると放電するのか? 
これはコロナ放電という仕組みを使ったもので、尖った金属が自然に放電する現象を使ったものです。
もちろん導電体であればアルミテープである必要はないですが、銅や鉄だと錆びるのでアルミという素材が向いているのでしょう。
アルミテープは価格も安いし、柔らかいから切ったり貼ったりしやすいですからね。

ちなみに コロナ放電には湿度が高いほど放電効果が高いなどと言った特徴があります。
アルミテープチューンが雨天時や高湿度時に体感しやすいと言うのはそのためでしょう。

続く……


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