当たりエンジンってどうして出来るの?


同じ車のエンジンでも、個体差がかなりあるのは知っての通りだと思います。
その中で、パワーが出ている物が「当たりエンジン」とか、パワーが出てない物が「ハズレエンジン」とか言われていますね。
まあ、壊れるエンジンが一番のハズレエンジンだと思いますが…。

さて、この「当たりエンジン」がどうして出来るのか考えてみましょう。
今回の話は簡単だと思います。

エンジンと言うのは、知っての通り回転物です。
回転物は、スムーズに回った方がパワーが出るし、逆に震動が大きいとパワーが出ません。
よって振動が少なく、エンジンの回転がスムーズな物が「当たりエンジン」の第一条件でしょう。
これは、エンジンをチューニング(本来の意味でのチューニング、調律)する技術ですね。

エンジンを調律するには、まずピストンやコンロッド等の動弁系の重量を、全気筒で合わせます。
当然、全気筒の重量が揃っていれば震動が減りますね。
更に、クランクシャフトの回転バランス、フライホイールやクラッチディスクを付けた状態での、ダイナミックバランスなどを取る事で、更に振動を減らして回転をスムーズにしていきます。

そして、燃焼室(シリンダーヘッド)の容積も合わせます。
燃焼室の容積がバラバラだと、シリンダーごとの圧縮比が変わってしまう事になるので、燃焼圧がバラバラになり、これまたスムーズな回転を妨げるからです。

更に、意外と知られていないのが、タペットクリアランスですかね。
これは 簡単に言うと、カムシャフトとバルブの隙間です。
バルブのリフト量や開閉タイミングに影響を与えるものです。
これも、全ての気筒で揃っていないと吸気量、排気量が微妙に変わってしまうのはもちろんですが、クリアランスの数値自体も重要です。
どのエンジンにも、タペットクリアリンスは、「この範囲にして下さい」と言う設定幅が存在します。
このクリアランスを、設定幅のどこに合わせるかによって、エンジンのパワーがかなり変わることがあります。

一般に、タペット音と言うのはあまり心地いい音ではないので、嫌う人が多いですね。
よって市販車では、音を消すために、バルブはゆっくり開いてゆっくり閉じる、と言うセッティングになりがちです。
そうすれば、タペット音は軽減されます。
しかし、ゆっくり開け閉めすると、混合気が漏れたり、排気ガスが残ったりと、デメリットとなる事が多いそうです。
最大パワーを考えると、出来ればバルブは一気に開けて一気に閉める方が効率がいいわけです。

ちなみに、電磁バルブと言うのを知っていますか?
まだ自動車には使われていないようですが、船のエンジンなどの低回転エンジンでは既に使われているそうです。
これは簡単で、カムシャフトの代わりに電磁石でバルブを開けたり閉じたりするものです。
当然磁石なので、バルブは一気に開き、一気に閉まります。
現在のF1のエンジンはエアバルブらしいですが、将来はこの電磁バルブに取って代わるような研究がされている、という話も聞いたことが有ります。
ただ現時点でのネックは、バルブの開閉にかかる時間が遅いため、高回転まで回るエンジンではまだ実用的でないようですね。
ただこの話からも、バルブは一気に開いて一気に閉じる方が効率が良い事が伺えますね。

さて、車のエンジンでこれを真似しようとすれば、タペットクリアランスを規定値の範囲の最大値に設定すれば、近い効果が得られるはずです。
簡単に言うと、圧縮工程で混合気が漏れることなく、実質多くの混合気を燃焼させられるわけです。
( 当然タペット音はうるさくなるでしょうが。)
まあ、広ければ広いほどいいというわけではなく、この値はもちろんエンジンによって最適値が有ると思いますが。


さて、あまり長くなる前に(笑)この辺にしておいて、、、
当たりエンジンとは、これらのピストンなどの重量が偶然揃い、クランクシャフトやフライホイール等の回転バランスが偶然揃い、燃焼室容積が偶然に揃い、タペットクリアランスが偶然に最適な広さで、且つ揃ったりしたものですかね。
(他にも色々細かい要素が有りますが、大まかにはこれらでしょう)

エンジンは機械です。
何万台も大量生産をしていれば、中には確率的にこれらが偶然揃ってしまうエンジンが出てくるわけです。
それを、「当たりエンジン」と呼んでいるようですね。
逆に言えば、本来のチューニングとは、人工的にこの当たりエンジンを作る事でしょう。

余談ですが、メーカーや車種、更には製造ラインや製造時期によっても、当たり外れの多いエンジン、少ないエンジンが存在する事も覚えておくと良いでしょう。 その気になって調べれば、それらの情報も見つかると思います。

とりあえず、以上。

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